広田照幸『教育学』(ヒューマニティーズ)

 きっかけ。ちったぁマトモに「教育」を語ろうとするならば、教育学の本のひとつも読んでおかなきゃなかろうと。広田さんのいわゆる「飲み屋談義」のレベルでとどまっていることもできるが、個人的な生き方としてはそうはいかない。なにしろ俺、哲学科だからね。
教育学 (ヒューマニティーズ)
 全体的な感触としては、教育すること、ならびにそれについて語ることがいかに難しいか、がわかる本だった。教育はどうしようもなく間接的で不安定な営みなのだと。だから確固たる根拠をもって何かを言うことはできない。それゆえ教育学のシロウトがそれにつけこみ教育を公然と語ってしまっている。教育学を学んでいなくても教育について語ることを可能にする材料は揃っちゃうし、たとえば数学と違ってイイカゲンなこと言って叩かれる心配は少ない。
 ならば教育学は役に立たないのかというとンなことはなくて、絶対に正しいことは言えないにせよ、信憑性の高い知を積み上げてきている……。そこまでは了解できたんですが、教育学で具体的にどのような議論がされているかの例が示されておらず、なるほど納得、とまではいかなかった。巷にあふれる「俺の教育論」は教育学者から見るとお笑い草なのだろうが、どんな点が不備なのかという指摘は見られず。この点は further reading での課題だ。
 あと、第五章でちょこっと書かれていた本の読み方がわりと参考になった。