ジェイムズ『プラグマティズム』

プラグマティズム (岩波文庫)
 なんか珍しく得るところ多かった読書だった気がする。
 プラグマティズム。いろんなところに落ちてる概説から「実際に役立つものが真理である」という何ともけしからん態度だと思っていたのだが、読んでいくうちにこれは至極真っ当な態度であることに思い至る。つまり、これはなにかというと人間がいかにして真理(らしきもの)を獲得するかを説明しているだけなのですね。別に真理に関する新しい理論を提唱しているわけではなくて。だから「ある古い考え方をあらわす新しい名前」(本の扉より)なんね。当時この本およびプラグマティズムという運動がどのような思いを持って受け入れられた(或いは斥けられた)かは知らないのですが、今現在の常識でもって読むととてもあたりまえのことを言っているように見える。ま、要するに「実際に役立つものが真理である(ように人間は認識する)」という話なのでした。心理学者でもあったジェームズ氏らしい考え方ですね。
 本書で展開されているいくつかのプラグマティックな議論に関しては、唯物論と有神論はある/あったものごとを説明しているやり方が違うだけで、本質的な差はないよ!という指摘がよかったですね。これもとても常識的な結論。どっちをとるかは好みの問題だと。両極端によらずに真っ当にものごとを考えることを教えてくれる書だと思います。